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月: 2020年2月

フランスおそるべし アルル国際写真祭波乱の幕開け

アルル国際写真祭への旅 6日目

  1. 初日の受付は大混乱!
  2. プロフェッショナルじゃなくていい!
  3. 初フォトフォリオレビュー

初日の受付は大混乱!

あまりよく眠れないまま朝を迎えた。夜中に自分の両腕が湿疹でひどいことになっていることに気づいて愕然として寝付けなかったのだ。やはり日傘はさすべきだった。

7時半に朝食をとり、暑くならないうちに会場に行ってしまおうと8時過ぎにホテルを出て、40分ほど歩いて会場へ。

インフォメーションセンター前の建物。建物にプリントされた大きな写真が迎えてくれた。

歩ける距離ではあるが、重い作品を持っているので途中何度も喘息の発作を起こし、しばらく立ち止まっておさまるのを待ち、再び歩き始める・・・を繰り返しながらなんとか命からがら会場までたどり着いた感じだった。

案内所でもらったパンフレットを見てもインフォメーションセンターが何時に開くかどこにも書いていない。暑さを避けたかったこともあって早めに来たのだが、まだどこも開いていない。

同じように開始時間がわからず早めに来た人が何人もいるし、話してみると9時半だと聞いた人や10時だと聞いたという人など情報もバラバラ。

昨日お会いした千葉奈穂子さんも合流し、インフォメーション会場とレビュー会場を行ったり来たりしてみるものの、どちらも開く気配がない。

10時過ぎになってようやくインフォメーションセンターに入れたが、今度は受付の人とのやりとりが埒があかず、大混乱。どんどん人は集まってくるし先頭でとまってしまって全く進まない状況。

私たちは1週間通しで使えるフリーパスチケットを買おうとしていた。メールで送られて来た情報によると、レビューの参加者は売り場で名前を言うと、参加者リストがあるのでチケットを20%オフで買えると書いてあった。

そのことを受付で伝えても「参加者リストがあることは知っているけれど、ここにはないので安くできないとのこと。もちろん誰も納得できないのでいつまでたっても平行線で話が進まず、先頭で止まったまま。

先頭の一団の中にいた私も、後ろのお客さんを待たせている申し訳なさでいっぱいになってくるし、すぐ近くにいたイスラエル人の男性と途方に暮れていた。

今日、世界中から参加者が集まることはわかっているはずなのに、英語がわかるスタッフをなぜ受付に配置していないのか。そこからしてとても不思議だった。

するとそばにいた英語の上手なフランス人のフィリップが助けに入ってくれた。彼は「昨日もチケットを買いに来たけれど、リストがないと言われて買えなかった。一体どうなっているんだ!」とフランス語で問い詰め、それから振り向いて後ろのみんなに英語でやりとりの内容を伝えてくれる。

結局「リストはチケット売り場にはない。フォトフォリオ会場にいるスタッフが持っているからそこまで行ってくれ」とのこと。客の落ち度でもないのにどうして?携帯電話で連絡を取り合っているのだから、リストを持って行ってしまったスタッフが急いでこちらまで持って来てくれるのが筋ではないか、と私たちは思った。

しかし全く取り合ってくれないので、仕方なく団体でゾロゾロとフォリオ会場まで移動した。同じ敷地内とはいえかなりの距離があるし、太陽もじりじりと日差しが強くなってきている。

会場でジュリエットという人を見つけてリストのことを尋ねると、「私が持っています。すみません。一緒にチケット売り場に行きましょう。」とまたきた道をゾロゾロとみんなで戻る。

売り場のスタッフとジュリエットはしばらくもめていたが、また向こうの会場にいるスタッフに値段のことで確認することができたのでいきましょう、と私たちを引き連れてフォリオ会場に戻る。これは一体何?一緒に行く必要ある?

なんとこれが4往復!!暑い中かなりの道のりを歩かされて、それでもなかなか解決せず。

私はもう何も考えられないほど疲れ切ってしまい、フィリップの奥さんと歩きながら「これだけで痩せそうだね」とうんざりと言い合う。

道中フィリップが「僕たちはフォトフォリオに参加しにきて、まだお互いの写真を見せ合ってもいないのに、チケットの値段交渉のために行ったり来たり・・・何かおかしいね。」と苦笑している。一人だったらきっと腹が立って仕方がないような状況だったが彼らとすっかり仲良しになれたので、かえってよかったのかもしれない。

それにみんな、確かにひどくうんざりしつつも「まあフランスだからねえ。」と最初から諦めている人が多いのにも驚いた。

プロフェッショナルじゃなくていい!!

初日の各会場の受付は色々なことが徹底しておらず、混乱している。フィリップの気長な交渉の結果、写真集を出版している私とイスラエル人のユバルはプロフェッショナルと判断され、町の中心部にあるプロ用のチケット売り場まで行かなければいけないことになった。もううんざり!プロじゃなくていいし、この際高いチケットでもいいわ〜〜と泣きたくなった。

正直本当にそう思ったけれど、ユバルに「一緒に行こう。がんばろう」と励まされ、結局ずっと抱えて歩いていた重い作品をスタッフに預かってもらい(信頼していいかどうかすらわからなかったがこれ以上これを持って歩けなかった)

覚悟して出発準備。日傘は持って行くことにした。もうすでに湿疹が出ているし、この暑さの中さらに長い距離を歩くのは危険だ。せっかく仲良くなったフランス人のフィリップや奥さんのアニエスにも変に思われるのだろうなと悲しくなり、「クレイジーに見えるのはわかっているけれど、太陽アレルギーでこんなになってしまった。」と湿疹の腕を見せ、さらに「フランスに来て以来これをさすたびにフランス人から変な目で見られ、アヴィニヨンでは大声でバカにされ、町中の人に笑われた。」と一気に言い訳した。

大好きなフィリップを奥さんのアニエス。本当に彼らがいなかったどうなっていたかわからないほど助けてもらった。

それを聞いたフィリップは「いったい誰が笑ったんだ!!」と怒り、「自信を持って傘を使いなよ!周りを見てごらん。この人もあの人もみんなサングラスをしているでしょう?あれは強い紫外線から目を守るためだよ。それと同じことでしょ?フランスは日陰でも紫外線がきついのだから。それにその傘、とても素敵じゃない!!」と力強く励ましてくれて、涙が出そうなほど嬉しかった。ユバルも横でうなづいている。「本当に?これ使ってもいいの??」と思わず確認してからようやく安心してユバルと二人で地図を片手に出発した。

イスラエル人のユバル

影のあるところを選んで歩いてくれたのだが、日傘をさしている私といるとこのままではユバルまでが変人扱いされるのではないかと気が気ではなく、何度も「離れて歩いていいよ。」と言ったが「そんなこと気にしないで」とずっとそばにいてくれた。

やはり途中何度が私をみて目配せしあって笑っている人やギョッとした顔をする人たちなどがいて、ユバルには本当に申し訳なかった。

ユバルはとても穏やかで優しい

途中何度も二人で地図をひっくり返し、道を確認する。男の人は地図を読むのが得意だと思っていたけれど、ユバルは全然わからないらしい。それに気づいてから私が地図を読む役目を引き受けることにした。

散々迷いながらようやく目的の場所に行き着き、無事にプロフェッショナル価格でチケットを購入。2人ともクタクタに疲れ果てて、まずはカフェで喉を潤す。そこでユバルの写真を見せてもらい、彼の写真世界に感動した。1枚の普通の写真に見えるが同じアングルで違う時間にとった何百枚もの写真を点単位で組み合わせている。だから1枚の写真の中に同じ人が二人いたり、朝昼夜の光が混在していたり、大がかりなものは違う季節が一枚の中に混在していたりするのだ。

ユバルの作品。普通の写真に見えるが、実は何百何千もの写真のドットの組み合わせ。1枚に途方も無い時間がかかっている。じっと見ていると不思議な感覚にとらわれる。

デジタルな作業だが点単位に分割したものを組み合わせて行くので1枚作るのには途方も無い時間がかかる。分割の大きさによって写真の感じも全く違ってくるのも面白い。

今日の、何度も何度も続くうんざりする交渉。どれほど何度も歩かされてもずっとにこやかで、決して声を荒げることなく、混乱してパニックになっているスタッフのことまで優しく気遣い続けていたユバル。そしてそんな忍耐の人ユバルでないと作れない作品だと納得した。素晴らしい作品群だった。

その後その近くでNan Goldenの写真展と、彼女の生涯を描いたビデオ上映会をユバルと一緒に見た。私は知らなかったが、彼女はヨーロッパの写真家なら誰もが知るとても有名なフォトグラファーらしい。しかし、ドラッグとセックスと狂気の世界は、見ていてだんだん具合悪くなって来た。天才と言われなくてもいいから、絶対彼女のようにはなりたくない!という印象しかなかった。

ユバルも彼女の写真をみて「どうしてこればっかり?』とうんざりした様子。同じ価値観でよかった。

初フォトフォリオレビュー

その後私はユバルと別れてフォトフォリオ会場に戻った。最初の面談の時間まであと1時間あったので、レビューの様子を見ながら参加者達と話したり、写真を見せ合ったりして過ごす。レビューを終えた人たちがみんな、疲れ切った顔をして戻ってくるのを見て私もだんだん不安になって来た。

それぞれのテーブルで1対1で自分の写真を見てもらい、アドバイスをもらう。今見ても身震いする写真。

5時20分。最初のレビューが始まった。最初のエキスパートはMr.Squires Andrew。フランス在住のイギリス人だ。まず持参していた作品群と、私の著書「マイ・フォト・デイズ」を渡した。

技法の説明をした後、1枚1枚じっくりと写真を見て行く。そして彼は最後に「この技法は新しくとてもエキサイティングだが、まだリサーチ途上のように感じる。それに比べて、こちらの本の方はとてもよく完成されているので、この技法もこの本の写真のレベルになるまでリサーチを続けて、完成させてほしい。それからもっと枚数を減らして、大きな作品で見せるといいと思う。技法の使い方ももう少しシンプルにするといいのではないか。これは複雑に手を入れすぎている。たくさんの写真や本や展覧会を見て、作品の試作を重ねるように」と言ってくれた。英語も聞き取りやすく、あっという間に20分が過ぎた。

次のエキスパートMr.Simon Bainbridgeもイギリス人なので、英語は問題なし。と思っていたら、この人の英語はイギリス訛りでものすごく聞き取りにくく、何度も聞き返しながらセッションをすすめていく。

彼は「構成をもっとシンプルにして、インクで潰す部分をもっと多くして、見せたいポイントをもっと強調させると良い。しかし技巧に走り過ぎないように。そのためにこの人の作品を参考にするといい。」とVince Oliverという写真家の名前を教えてくれた。

そして最初のエキスパートと同様、もっと少ない枚数で大きな作品にして見せた方がいいのではないかと言われた。教師タイプの方で、こちらの言うことも真剣に聞いてくれ、良いアドバイスもたくさんいただいた。

引き続きすぐ、アメリカ人のエキスパートのところへ。この人の英語はとてもわかりやすく、助かった。まずは私が書いた技法の説明を読んでくれてそれから写真を一枚一枚見て行く。

「説明を読んだ時に想像していたものと全然違う。」と言いながら、じっくりと見てくださり、気に入った写真の時には「これは動きを感じる。」「ここに入れた線がとても生きていて面白い。」などと細かく感想を述べてくれた。

35mmフィルムで撮った写真のフィルムにとても細い縫い針で傷をつけて、陰影を出し、そこに版画用のインクを刷り込んでデジタルスキャンする。
傷の付け方でインクの入り具合が変わるので、微妙に調整しながら作り上げていく。
上半分に細かい傷を入れて、黒インクを刷り込み、余計なインクを拭き取ってからスキャンする。

「前の人になんて言われた?」と聞かれたので「最初の人はやりすぎなのでシンプルにするようにと言い、次の人はもっと複雑に手を入れた方がいいと言っていた」と答えると「僕はそうは思わないな。なぜそんなことを言うのかわからない。このままでとても面白いし、ちょうどいいと思う。あ、これも好きだなぁ。」などど言いながら何度も見返してくれる。

Mr.Seewaid Janが気に入ってくれた一枚

あっという間に時間が過ぎてしまい、それ以上あまり話せないまま終了した。この最後のセッションは陽の光が照りつけるテーブルだったので、終わると腕のブツブツはもっとひどくなっていて、これ以上外を歩くのは無理だと判断し、帰りはホテルまでタクシーで帰った。まさに疲労困憊とはこのことをいうのだと思った。

1日目は可もなく不可もなくで手応えも感じられないまま終わってしまった。しかし、20分間のセッションで見てもらうには枚数が多すぎることがわかった。写真を見るだけで時間のほとんどを使ってしまい、その後の意見や批判やアドバイスを聞く時間がなくなってしまう。明日は少し減らして、もっとテーマが明確になるような構成にし直してから臨もう。

今日はもう夜のイベントにも参加せず、寝ることにする。これほどまでに疲れるとは。初日からこんな状態で最終日まで体力的にも精神的にも持ちこたえられるだろうか。体を休められる時には休めておこう。すぐに眠りに落ちた。

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